旧版の刊行以来16年が経過した現在,旧版の内容はすでに時代に合わないものとなってしまったという感は否めない。まず,研究対象を構成するマス・コミュニケーションのメディア側の状況が大きく変質した。従来のマス・メディアの枠におさまらない新しいメディアおよびコミュニケーション・システムが出現し,強大な力を振るうようになっている。さらに,データ収集のための装置としてのメディアの発達も著しい。また,人びとの生活時間の多様化や住居形態の変化,理論的なランダム・サンプリングの実行が極めて困難になるなど「調査環境」の悪化も進んでいる。このようなことから,旧版の役割はすでに終わったものとして,時代により適合した新しい版を刊行しようと考えるに至ったのである。これは,上述のような16年間の変化を考えると気が遠くなるほど大変な作業になるであろうから,旧版の著者単独でよく成しうるものではない。幸いにして,過去たびたび共同研究の仲間となり,新しいコミュニケーション研究方法に関する論文の共同執筆者ともなった島崎哲彦・東洋大学教授を共著者に迎えることができたので,この度ようやく改訂新版を刊行する運びとなった。(「はじめに」より)
I 調査とマス・コミュニケーション研究
1 調査とはなにか
2 調査の基盤一論理と実証
3 調査の効用と限界
4 マス・コミュニケーション研究における調査の適用範囲
5 調査研究の倫理的問題
6 マス・コミュニケーション調査の基本プロセス
II マス・コミュニケーション調査の企画・立案
1 問題の設定
2 調査方法の選択
3 それぞれの調査方法の特徴
III 調査実施の準備
1 調査対象の確定
2 スケジュールの決定
3 予算の作成
4 調査図式一要因の相互連関図一の作成
5 調査票の作成
IV 対象の選定
1 全数調査と標本調査
2 有意抽出と無作為抽出
3 単純ランダム・サンプリング
4 系統抽出法(システマティック・サンプリング)
5 層化抽出法(層化サンプリング)
6 多段抽出法(多段サンプリング)
7 抽出法の選択
8 抽出のフレーム
9 割当法(クォータ・サンプリング)
10 サンプルを用いることによる誤差
11 サンプリングの例
V データの処理一集計・分析
1 有効票の確定
2 コーディング
3 予備的集計
4 欠損値の処理
5 単純集計
6 クロス集計
7 より高次の統計分析
VI 生産・伝達過程の調査(送り手の調査)
1 生産・伝達過程の調査の問題
2 生産・伝達過程調査の例
VII 内容分析
1 内容分析とは何か
2 内容分析の基本課題
3 内容分析の基本的手続き
4 テレビ,ラジオの内容分析
5 内容分析の研究例
6 物語分析
VIII 受容過程の調査一(1)基本的問題
1 マス・コミュニケーションと受け手の単位
2 個人とマス・コミュニケーションの関係
3 集団・社会とマス・コミュニケーションの関係
4 分析の方向と課題
5 効果研究一受容過程調査の中心的課題
IX 受容過程の調査一(2)接触と知覚
1 接触のレベルの調査
2 メッセージの知覚の心理学的実験
3 接触,知覚のレベルの調査の例
X 受容過程の調査
一(3)心理・行動の実態と変化1 知識,態度・意見,行動のレベルの調査
2 知識,態度・意見,行動のレベルの調査の例
付録1 受容過程調査の質問文の例
付録2 マス・コミュニケーション調査の例
1 新聞の選挙報道の内容分析
2 「テレビと新聞」に関する社会心理学的調査
引用文献
参考
:稲葉三千男著『マスコミの総合理論』、『臨床心理研究のための質的方法概説』