新刊案内2007年11月12日 発売    

高 森 俊 島 崎 清 海 

久保貞次郎美術教育論集 下巻

――児童画の世界・児童画と教師――

発売中

A5並製 本文360頁 カラー口絵8ページ 本体2600円

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 危機にひんした現代が教育にもとめるべきものは何か。ぼくの問うのは,現代という時代の混乱と矛盾のなかに,新しい秩序と希望をもたらすべき教育とは何かということである。ここ数世紀にわたってわれわれは外界のもの,客観的なものを探究したように,いまやわれわれは,内的なもの,主観的なものをやしなわなければならない。そこに芸術教育の重要さが浮かびあがってくる。芸術教育は感情の陶冶である。じっさいには,教育のすべての面で,感情の陶冶がもとめられなければならないのであって,芸術教育だけが,それを負たんするのは重荷にすぎるといわなければならないだろう。しかし,芸術教育は何はおいても,この感情教育に最大の力点をおかなければならない。感情は子どもでは,ほとんど,あるいはかなり無意識的なものである。この事実を否定しようとすると,じっさいの教育がうまくいかないことは,偏見をすててものごとを観察する習慣のあるひとにはすぐわかるだろう。(『児童画と教師』より)

I 児童画の世界
  1 理論
    芸術教育と現代
  2 児童画
    欧米の児童美術教育  子どものさし絵
    児童画の未来  
    児童画はどのように進歩してきたか
    世界の児童画  
    チイゼックと二十世紀の美術教育
  3 幼児画
    幼児画について  幼児と絵画
    幼児の絵の指導者  幼児の絵とその見方
    幼児画における創造と模倣の意味
  4 教師と環境
    造形芸術と教育  教師とはなにか
    教師の役割  子どもの精神の陶冶を
    教育の環境
  5 エッセイ
    花の絵だより  小コレクター運動の意義
    短い対話  静かな列車
    版画についての対話  純粋な対話
    小コレクターとジャーナリストとの対話

II 増補版 児童画と教師
  1 現代と美術教育
    人間疎外と美術教育  美術教育とセンス
    創造美術教育の主張と実践
  2 児童画
    小学二年生の絵  夢と冒険の時代展
    日本の児童画  絵をかく皆さんへ
    ぼくの考える児童画展
    メキシコ児童画展へのメッセージ
    日本の子どもの絵
  3 幼児画
    幼児の美術教育  幼児の絵
  4 教師
    子どもの絵と教師  美術教育を支える人々
    美術教育者北川民次とともに  子どもの闘争心 
    子どもの美的感覚を鍛えるには
    美術教育のあり方  創美セミナールについて
  5 エッセイ
    化粧について プラハでのできごと
    沖縄の皆さんへ  ぼくと美育文化    
    啓蒙についての対話
  6 附録
    外国児童の想像による絵  子どもの絵の問題    
    子どもの絵本の専門図書館を
    なぜ学校で絵を教えるか
     ――美術教育の目的と方法――
    美術館と美術教育  
    美術鑑賞の場としての美術館
    創美を始めたころ 

  創造美育関係文献目録(島 崎 清 海)
  解説(高 森 俊) 

    
 久 保 貞 次 郎(くぼ さだじろう)
   1909年栃木県足利市に生まれる。1933年東京大学文学部卒
   1938年から39児童画の収集と研究のため欧米旅行。
   この前後から新しい美術教育運動を起こす。1952年創造美術教育
   協会創立に参加。1966年ベニス・ビエンナーレ国際審査員。
   元跡見学園短期大学学長。美術評論家。

参考:『北川民次美術教育論集』『子どもの絵は心』
   『久保貞次郎美術教育論集 下』『道 Kawasaki 心の旅』

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