既刊案内2009年5月20日発売

植田浩史・立見淳哉編著

『地域産業政策と自治体』
――大学院発「現場」からの提言――

A5判 上製 264頁 2600円

中小企業家しんぶん7/5号に紹介されました。(09/7/2)

発売中

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 本書の執筆に際して共有された問題意識は次のとおりである。第1に,現在の地域経済,地域産業に対する強い危機意識である。1990年代のバブル経済崩壊,「失われた10年」といわれた不況期,そして2002年から07年までの景気回復期を通して,日本の経済システムは大きく変化した。その一つが地域経済システムの変化であり,地域経済の格差の広がりである。それぞれの地域経済が,それぞれに地域の可能性を生かした発展戦略を持ち,積極的な対応を図っていかない限り,将来の地域経済の発展はありえない。しかも,日本全体に共通するような一般的な解は存在しない。地域ごとに,地域の状況に応じた戦略を考えていかなければならない。第2に,地域ごとの発展戦略は,従来の延長線上ではなく,新しい地域経済の流れを自ら創造することが不可欠となっている。新たな地域経済の創造をどのように進めていくのか,そのためには地域に今何が問われているのか,私たちはこうした問題に正面から取り組んできた。
 第3に,求められる地域経済の創造にとって地方自治体の役割の重要性である。地域経済の主体的な担い手として民間企業の役割が重要であり,自治体は地域経済創造の中心的な担い手とはなりえないし,これまで多くの自治体の経験にあるように自治体が事業主体となることが逆に多くの問題を生んできた。しかしながら,地域経済の創造ということを考える場合,地域経済をデザインする役割,地域経済をコーディネートする役割を地方自治体が持つことは従来以上に重要になっている。地域経済をデザインし,地域経済をコーディネートし,地域の多様な経済主体などを結びつける役割は,地域経済が今後持つべき役割としてますます重要になっている。地方自治体は,何をすべきなのか,何をすべきではないのか,民間に何を委ねるのか,具体的に論じていくことになる。以上の問題意識に基づく本書の課題は次の2点である。第1に,現在の地域経済,地域産業に関する問題を各執筆者の視点から示していることである。地域経済,地域産業の抱えている問題は地域によっても異なるし,同じ地域でも抱えている問題は複合的である。複雑な様相を呈している地域経済,地域産業に関する問題をそれぞれの視点から示すことでとが可能になる。第2に,こうした地域経済,地域産業の問題への分析を深めることを通じて新たな地域産業政策を提示していることである。なお,ここでわれわれが地域産業政策とする場合,地方自治体を中心とした地域産業の振興政策,中小企業の振興政策をさす。厳密な意味では,地域産業の振興政策と中小企業の振興政策は政策の対象が異なり,政策の課題も異なるが,地域産業の担い手の中心が中小企業であるため,実質的には両者は重なることも多い。ここでは便宜上,両者を合わせて地域産業政策と呼んでいる。また,地域産業政策のデザイナ,コーディネータとしての地方自治体の役割は重視しつつも,地域産業政策の担い手を地方自治体に限定してはいない。多様な性格を持つ組織や団体,地域に存在する起業が関わりあいながら地域産業政策を担っているのであり,広範囲の主体を想定している。(「はじめに」より)

推薦文

本書の最大の魅力は、実践的な知と学問的な知の融合にある。現場を知悉する執筆者らは、自らの職業経験に根ざした独特の感覚で個々のテーマに挑み、学術的な考察に基づく問題の一般化と今後の展望を真摯に模索している。多くの読者にとって、社会人大学院で学んだ執筆者による、「現場」からの提言は斬新だろう。世界恐慌からの脱出をめざす、新たな地域産業政策を真剣に考える人たちに、本書を強く薦めたい。

大阪市立大学創造都市研究科教授・佐々木雅幸



目 次
第1章 地域経済の現状と地域産業政策の課題
(植田浩史 慶應義塾大学)
第2章 少子高齢社会における地域産業政策
   
−高齢者の力を生かした地域の活性化−(清水克昭 大阪府庁)
第3章 地域における戦略的な地域産業政策の展開
 
―地域経営の視点からの考察― (金崎孝之 大阪市役所)
第4章 産業的自治と地域産業政策の新しい可能性
    
−大阪府大東市の挑戦から見えてくるもの−(三浦純一 元大東市役所)
第5章 小零細企業と地域産業振興
    
―ものづくり基盤の実態と課題,東大阪市を事例に―(菰島克彦 布施民主商工会)
第6章 観光産業の集積化と集団学習環境
    
―観光産業クラスターの批判的検討と佐原の実証研究を通して― 
     (杉山武志 社団法人日本経営協会)
補 章 地域産業政策と首長のリーダーシップ―東大阪市長の経験から― (長尾淳三 元東大阪市長)
第7章 中小企業振興基本条例を軸にした地域産業政策の展開
    
――北海道帯広市を事例に(植田浩史 慶應義塾大学)
第8章 これからの自治体地域産業政策
(立見淳哉 大阪市立大学)
補 論 大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策専攻都市経済政策分野について(立見淳哉 大阪市立大学)

参考:(既刊)
植田浩史編『産業集積と中小企業』A5判上製 240ページ 2600円(平成12年度商工中金の中小企業研究奨励賞を受賞)
植田浩史編『「縮小」時代の産業集積』A5判上製 280ページ 2800円
植田浩史・本多哲夫編『公設試験研究機関と中小企業』A5判上製 324ページ 3200円

その他創風社の中小企業をテーマとした本(既刊)
相田利雄・小川雅人・毒島龍一・川名和美著『増補・現代の中小企業』A5判並製 466ページ 2900円
平野 真著『技術者のための起業マニュアル』A5判並製 296ページ 2600円
小川雅人・毒島龍一・福田敦『現代の商店街活性化戦略』A5判上製 202ページ 2800円(平成16年度商工中金の中小企業研究奨励賞を受賞)
福田敦
・毒島龍一・小川雅人『地域商業革新の時代A5判上製 256頁 本体2400円

(発行予定)
小川雅人『地域小売商業の再生とまちづくりA5判上製 230頁 本体 2400円
植田浩史.北村慎也・本多哲夫著地域産業政策――自治体と実態調査A5判上製 260頁 本体 2400円
小川雅人中小企業経営論A5判上製300頁 2800円 

 

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