子どもカレンダー2010(09/10/5一部更新 ページは随時更新)

                                 14枚 1200円

発売中 

 2010年度版からお近くの書店、インターネット書店に注文して頂いても購入出来ます。

子どもカレンダー2011のページ。 

カレンダーの後に、子どもの絵から心の成長を探るための資料がついています。

子どもカレンダーに関心がある方はWebページや『子どもの絵は心』(CD-ROM付き)など、創風社刊児童美術教育書を参考にして下さい。北川民次美術教育論集上、下、久保貞次郎美術教育論集その他、児童美術教育研究会保育研究会)に参加してみてください。お知らせは随時WebページにUPします。

 子どもカレンダーの絵は次のような考えを大切にして編集されています。 
 1945年から教育が大きく変わりました。子どもへの理解,子どもの絵の見方・理解の仕方が大きく変わりました。子どもの絵の研究は子どもの意志による自由な表現を理解し,尊重する方向が広がりました。そして子どもの創造力を育てることが大切にされるようになりました。この児童画の見方を久保貞次郎は5項目にまとめて提唱しました。


1 概念的でない。
2 確固として自信にあふれている。
3 生き生きとして躍動的である。
4 新鮮で自由である。
5 迫力があるかあるいは明るい幸福な感情があふれている。


1 「概念的でない」とは何ごとにも自分の感動や実感を中心に考え表現できることであり,固定的な常識的な考えにとらわれないことです。
2 「確固として自信にあふれている」とは成育歴の中で自分の意志による好奇心や探究心による行動を多くもつことによって心の中に成長してきた,経験による判断力を自分なりに持っていることです。そして新しいことに向かっても恐れずに好奇心のまま立ち向かってゆく精神を持っていることです。
3 「生き生きとして躍動的である」とは子どもらしい物事にたいする発見や感動そして探究心をつねにもって生活している子どもの感情の率直な表現です。
4 「新鮮で自由である」とは毎日を生き生きと生活し子どもらしい発見の喜びや楽しさが表現できている,マイペースをもった子どもの表現した絵です。
5 「迫力があるかあるいは明るい幸福な感情があふれている」。追力とは自分がしようとしていることに対する意欲の強さや集中力の高さ,成し遂げようとする心の闘いのエネルギーから表れるものです。力強さとも言います。明るい幸福な感情とは子どもの行動をつねに肯定的に寛大な気持でみている大人があり,愛されているという無意識の感情が子どもに伝わっている心の安定した状態を持って生活できているときに描かれた絵のことです。もちろん大人も子どもの絵や行動が子ども自身の人生の研究であるということを理解できる寛大な心をもってみていなければなりません。

 この5項目は,子どもの絵の表現が精神的な活動であり,自分の意志による表現が創造的な心を育てることになり,人間教育の中心である感情の成育や自立心の獲得に大きくかかわってゆくことを示しています。
 
                                                   (2008年10月2日 高森俊)
参考:『久保貞次郎美術教育論集上,下』(創風社刊)

  予どもが母親の胎内から生まれての第一声は「オギャー」です。これは音声として周りの大人には聞こえてくる表現の第一歩です。視点を変えてみれば生きる意志であり,生きるための表現だと言うことができます。本能と言う言葉で我々は納得してしまいますが,今その生まれながら持っている意志に焦点を当てて考えなければならない時代にきていると思います。
 この生まれながらに持っている身体の成長とともに内部から湧き上がってくる意志(精神的生命力と言っても良いでしょう)を充分成長させなければなりません。それはこれから生涯を生きていくための心の底流を流れてゆかなくてはならない自然なものです。そしてそれは人間が何億年と生命を維持してきた遺伝子の中に蓄積されてきたものだと思います。その表現はかかわる人が受け取ることによって伝わり発信者の満足感が満たされていくことによって大きく成長してゆきます。
 幼児期には子どもの意志の表現が母親と子どもを取り巻く大人によって充分受け取られていることが,子どもの心を安定させます。その安定感が実験と研究によって物事を知っていく本来の子どもの心として成長していくのだと思います。この自然な子どもの意志を無視し続ければ,子どもは自分の周辺の環境から学ぶことをやめて,いかにして母親をはじめ周りの大人の愛情を獲得しようかというところに感情がとどまり,そのためにあらゆる我慢をして考えられないような長い年月「良い子」を演じ続けたり,思いもよらないような反逆的な行動になったりします。そこにとどまれば感情の成長が部分的に未熟なまま残ってしまいます。
 さらに現代の子どもを取り巻く学校社会を含めた状況は,学力競争原理が社会のすみずみまで支配しているため,乳・幼児期から子どもの意志を無視したさまざまなスタイルの早期教育や躾が全盛です。そのため子どもたちが本来持っている自然な心や感情の成長が競争原理にしばられて,ゆがんでいることが多々見受けられます。現在起こっている青少年犯罪の報道を注意深く見聞きしていると,これらの子どもの意志を無視した教育のゆがみが,それらを生み出している例が多く見い出すことができます。
 2008年6月におきた秋葉原殺人事件のK君の生い立ちも幼児期から「厳しい父親」と「教育ママ」によってK君の意志が完全に押しつぶされ,親の奴隷にされていたことを多くの報道や本人の書き込みから想像する
ことが出来ます。「良い子」を演じなければ生きていけないほどの恐怖を両親にたいして持っていたことを推察することができます。学校の成績も親にたいする恐怖が根底にあったのでしょう。その恐怖による行動が挫折という形であらわれます。思春期になれば当然今までの抑圧や恐怖に対するお返しを家庭内暴力と言う形で起こします。その暴力は長い間の不健全な抑圧を受けて無理して我慢していた自分を取り返そうとしている無意識の暴力です。言葉を変えて言えば一人の人間としての健全な心を取り返そうとしているのです。
「良い子」を演じていることに気付かない多くの大人は事件を知って「あんな良い子が」「あんななんでもない普通の子が」なぜ ? という疑問を生み出します。4〜5歳の幼児期でも子どもの意志を無視して親の言うことに納得させられたり,また強引なしつけなどによってたたく親の子どもは保育園や幼稚園でなにもしていないのに自分より弱い友達を蹴ったり叩いたりします。また楽しそうに遊んでいる友達の輪を壊します。
秋葉原の歩行者天国に乱入したように・…いまや「心の闇」は大人がつくりあげていることに気付かなければならないときです。意志の無視や抑圧された感情は未成熟な破壊的な感情を生産し続けます。
 濃いめの絵の具を充分使った子どもの意志による「自由な絵の表現」は感情によって描かれます。描いているときの心の中では自己決定や判断力・想像力などの精神活動が無意識に行なわれ,それが未成熟な感情を自分で成長させることになります。
 「人間の性質は生まれながらにして善である。無意識の心の作用は決して不道徳ではない。子どもの持ついろいろな欠陥は,抑圧によって矯正されるものではなく,その逆に子ども時代の抑圧の結果生まれたものである。もし子どもがその発達の各段階で,『自由に自己を表現』することを許されるならば,彼は一人で非倫理的なものを除き去り,やがて愛他的精神が青春期に無意識の心から現れ始めるにつれて,一個の倫理的存在へと発展していくだろう。なぜなら大人になっても非倫理的なものが根強く生き続けるのは,子どもの時その原始的欲望を抑圧したためだから。子どもが自由であればあるほど,彼はますます思いやりのある社会的な子どもになり,また彼の主な興味はますます進歩的になり,彼の根本的本能は常に新しい困難の征服を求めて,いっそう価値のある社会的活動に集中されるだろう」(親と教師に語る・ホーマー・レイン)
 レインの言葉も自由な自己表現を抑圧し続ければ,未成熟な感情が「心の闇」(非倫理的なもの)が形成されていくことを物語っています。
 感情表現と心の無意識の関係は「子どもの絵」と「行動を」通して研究していかなければなりません。その感情教育は人間教育の基礎になるといっても過言ではありません。
                                          
                                                  (子どもカレンダー編集委員会)

5月 小学5年生 女

3月 2才8ヶ月 男

6月 5才10ヶ月 男

11月 中学2年生 女

12月 5才11ヶ月 男


カレンダーに寄せられた様々な感想

5月 ○がんばって描いているエネルギーをかんじると共に花のかき方など繊細さもかんじる絵。○葉っぱの生命力を感じる。小さいテントウ虫がかわいい。○ きっとこの子は心が自由でいちごが大好きなのではないでしょうか。よく観察しワクワクするような喜びをしなやかにゆとりをもって描き上げています。きっとこれからの人生も自分の意志で切り開いていける子だと思います。○リズミカルでおはなしが聞こえそう。○赤いイチゴの強さを青いイチゴにやさしさを青い大きな葉っぱにまもられる大きな安らぎをかんじる。いちごがおどっている。○ それぞれが生きていて,存在をじゃましない。○はっきりとした色が鮮やかでかわいく,また大きな葉っぱが力強い。○ 葉っぱの強さ,存在感。○ 自分の意志がしっかりとマイペースをもてるように成長していると自分でしようとしたことには誠実に心ゆくまでむかっていきます。したがっていい加減にはしません。この絵でも描こうとしているイチゴはイチゴの実も花も葉もテントウムシも誠実に描いていて神経が行き届いています。しかし人の意志によってやらされた部分が黄色の筆づかいの不誠実な書き方に現れています。子どもの意志や表現を無視してさせることが教育だと考え違いしている人の多いことを嘆かずにいられません。


3月 ○気持ちよく手が動いているように,エネルギーが外に向かって動いて行くように感じる。○すっきり感が気持ちいい。勢いがある。伸び伸びしていていい。パワフル。軽やかに描いてる様子がみえてくる。○スピード感があり動いている。○3歳位になると,どの子でもクレヨンか鉛筆でこのようななぐりがきをしてくれます。この絵はえのぐで描かれているので,子どもの表現が大きくはっきりと伝わってきます。描いた子も満足感があり,見る大人にも発達の様子と心がはっきりと見えてきます。活動的で健やか。生き生きとした躍動感が伝わってきます。○げんきいっぱい。あそんでいる様子が見えるよう。○勢いもげんきいっぱい,線も太くてずっしりしている。○線がはねて走っているように見える。○気持ちがいい。○3歳児の好奇心とその行動範囲の広さを感じさせてくれます。線のスピードや強弱は毎日の自分の意志によって行動していることの楽しさを物語っています。それは自分の中から出てくる周りを知ろうという本能的な力であり,本人の意志でもあります。

6月 ○集中して描いている感じ。元気があって動き出しそう。○ 動き出しそう,意思がしっかりしている。○やわらかい。強くなりたい希望を感じる。○四つ切りの画用紙2枚をつなげて描いています。大きな紙を自分から要求して描こうというだけでも目の前のものに立つ向かってゆく,この子どものなみなみならぬ意欲を感じます。その意欲がそのまま絵に表れています。大きな堂々とした魚,太い線の存在感,全体の迫力のそれでいて骨まで描いてある子ども特有のレントゲン描法が使われています。絵は上手下手で見ることではなく,意欲や意志による精神活動であることを知らなければなりません。

11月 ○独特のオリジナリティーをかんじる。○きれいな色を作ってるなー。○ とってもていねいに集中している。○ きれい,やわらかく,リズムがある。音楽がきこえてきそう。○思春期になると限りなく深くファンタジーの世界に入り込めるほど感覚が高揚するのだと思います。誠実に描かれ,独特の世界をかもし出している,きれいで官能的な絵だと思います。○ゆるやかさにいやされる感じがする。見ていると体がゆれてきそうな感じ。きもちいい。○すごい集中。はてしなく広がる心。○ 何年もの間,絵の具だけを使って自由に絵を描き続けていくと創造する力が本当にはげしく成長していくものだと,絵を通して大人が学ぶことが出来ます。この絵もそんなすばらしさをもった絵です。描こうとすることに対する集中力,オリジナルな形,オリジナルな色彩感覚が個性となって現れています。もちろんそこにいる実践者の心が子どものすることは何事も研究であることを理解していて,肯定的な目で見守ることが出来る寛大な精神を持っていなければなりません。

12月  ○バランスをとりつつも,大きさやまとまりをかんじる。無駄になるものがなくていい。○ 不思議な感じ。ハッキリした意思がある。○ 大胆,力強さとかたさがある。○ 新鮮で自由で気持ちがいい。自分の意志で描かれ,整理された表現。明るさとたくましさを感じる。○丁寧。大きな海の一部。それが動き出している。○ 人間が生まれながらにもっている,ものを知ろうとする力,言葉を変えれば生きて行く力がこの年齢にしてはっきりと感じられる絵です。大胆な決定的な赤い線,明確な色,そして全体の力強さは作者の意志が何事にたいしてもはっきりとしていることを物語っています。

児童美術教育の言葉

5月 絵を描くということは,たくましい本能の欲求であり,生命の喜びとしてだれもが身のうちに持っているものです(岡本太郎)
3月 精神的自由とは一点の絵をかくために集中する力であり, その力は自分を解放していくものです。(高森 俊)
6月 子供が創造的活動にしたがうのは,ただ絵を描くためでなく,自分自身を表現するためだ。(ローウェンフェルド)
11月 (よい絵とは)「描いた」という絵でなく,良く「生きている」ことを証明する絵である。(周郷 博)
12月 要するに絵においては、音楽がやっているように、描写するより、暗示しようと努めるべきなのだ。時折、私の絵はわからないといって非難される。私の絵の中に説明的な面を探すんだが、それがないものだからね。〈ゴーギャン〉

カレンダー編集に参加した保育園・学童保育所・アトリエ


むぎの子共同保育園
(沖縄県南城市大里字古堅198 TEL 098―945―8192) とよむ保育園(沖縄県中頭郡中城村南上原841 TEL 098―895―6562) 梨の花保育園(島根県安来市荒島町393―3 TEL 0854―28―6643) 風の子共同保育園(京都府舞鶴市大内野107 TEL/FAX 0773―76―4972)子どものアトリエ 野の花(愛知県小牧市岩崎1242-15 TEL/FAX 0568-73-6295)キッズ・アート・クラブ(静岡県富士宮市星山1019―25 TEL/FAX 0544―24―9141) はらだっこ児童クラブ(静岡県富士市原田343-1 TEL/FAX 0545-57-2239)児童美術教育研究所 小さな原始人(神奈川県川崎市中原区丸子通2―425―8 TEL/FAX 044―722―8229) 大きな木保育園(東京都世田谷区松原5―18―12 TEL 03―3328―9822) とねっこ保育園(茨城県取手市下高井1087―24 TEL/FAX0297―78―2203) にしき保育園(埼玉県加須市川口1301―2 TEL/FAX 0480―66―1656) 白鳥保育園(宮城県登米市南方町峯90―2 TEL 0220―58―2681)

参考:保育書、美術教育書→既刊案内教育児童文学美術障害児医療検索

カレンダー購入御希望の方は、お近くの書店、インターネット書店などに注文して頂くか上記の最寄りの保育園、アトリエもしくは創風社に連絡下さい。

(株)創風社 〒113-0033 東京都文京区本郷4-17-2 TEL 03-3818-4161 FAX 03-3818-4173

 

TOPへ