子どもカレンダーの絵は次のような児童美術教育の考え方を土台として編集されています。1945年から教育が大きく変わりました。子どもへの理解,子どもの絵の見方・理解の仕方が大きく変わりました。子どもの絵の研究は,子どもの意志による自由な表現を理解し,尊重する方向が広がりました。そして子どもの創造力を育てることが大切にされるようになりました。この児童画の見方を久保貞次郎は5項目にまとめて提唱しました。
1 概念的でない。
2 確固として自信にあふれている。
3 生き生きとして躍動的である。
4 新鮮で自由である。
5 迫力があるかあるいは明るい幸福な感情があふれている。
1「概念的でない」とは何ごとにも自分の感動や実感を中心に考え表現できることであり,固定的な常識的な考えにとらわれないことです。
2「確固として自信にあふれている」とは成育歴の中で自分の意志による好奇心や探究心による行動を多くもつことによって心の中に成長してきた,経験による判断力を自分なりに持っていることです。そして新しいことに向かっても恐れずに好奇心のまま立ち向かってゆく精神を持っていることです。
3「生き生きとして躍動的である」とは子どもらしい物事にたいする発見や感動そして探究心をつねにもって生活している子どもの感情の率直な表現です。
4「新鮮で自由である」とは毎日を生き生きと生活し子どもらしい発見の喜びや楽しさが表現できている,マイペースをもった子どもの表現した絵です。
5「迫力があるかあるいは明るい幸福な感情があふれている」。迫力とは自分がしようとしていることに対する意欲の強さや集中力の高さ,成し遂げようとする心の闘いのエネルギーから表れるものです。力強さとも言います。明るい幸福な感情とは子どもの行動をつねに肯定的に寛大な気持でみている大人がいて,愛されているという無意識の感情が子どもに伝わっている心の安定した状態を持って生活できているときに描かれます。もちろん大人も子どもの絵や行動が子ども自身の人生の研究であるということを理解できる寛大な心をもってみていなければなりません。
この5項目は,子どもの絵の表現が精神的な活動であり,自分の意志による表現が創造的な心を育てることになり,人間教育の中心である感情の成育や自立心の獲得に大きくかかわってゆくことを示しています。
参考:『久保貞次郎美術教育論集上,下』(創風社刊) |