『しようちやんの日記』自閉的傾向のわが子と向きあった30年 これは著者の長男である仲本彰一郎さん(しょうちゃん、以下彰さん)の三〇歳までの成長過程をテーマに、静子さんと保育園・施設、作業所との往復手紙や、静子さんの手記、そし彰さん自身の日記等をもとに作られた本です。彰さんは、生まれた当初は普通だったのに、一歳三ヶ月から「徐々に退行」し、二歳近くで自閉的傾向を伴う精神発達遅滞と診断されました。自閉症については、「性格が内向的な人という認識を持たれる方が"るが、実は脳に障害のあ心病気であり、その障害の程度もさまざまである」と解説されています。そうした彰さんは、保育園、小中学校、養護学校、そして現在の福祉作業所と、「皆に支えられ」「嵐をのりこえて」現在に至っています。福祉作業所では、ゴルフボールの袋詰め作業が得意だというのです。彰さんをここまで育てるのは並大抵ではなかったことが、文幸の行間から推察されますが、この本では、そうした大変さを強調するのではなく、むしろ淡々と記しています。その点が、読者を引きつけると思います。第5章の「しょうちゃんの日記」はひらがなが多く、読むのに一寸時間を要しますが、前記のような病気の彰さんの心のヒダに触れることが出来る貴重な章であり、読んでいくうちに引き込まれてしまいました。ここでけ、彩さんの反省の言葉が繰り返し記載されています。人間は、維しも失敗や誤り・過ちをおかしますが、そうしたことを自省し、その後の人生に生かせるかどうかが重要でしょう。彰さんも、数多くの自省を重ねたからこそ、ここまで成長されたのであり、その背後に、静子さんにじめ関係者の、まさに根気強い「教育」があったことは疑いありません。
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